シリーズ化して自分も勉強しようと目論む、【腕時計の基礎知識】シリーズ第二弾。
腕時計の大敵である水。時計好きともなれば、水に触れる場面ではついつい慎重になることも多いですよね。
ただ、時計は使ってナンボ。
せっかくの防水性能を持つ時計達、「このくらいの場面ならガシガシ使っても大丈夫。」というラインを知って、よりアクティブな時計ライフを送りたい。
そこで、時計の防水性能についてまとめてみました。参考になれば幸いです。
なぜ防水が必要なのか
そもそも、なぜ腕時計には防水性能が必要なのか。
水分が時計内部に侵入すると、以下の症状が発生します。
【目に見える症状】
風防の曇り
針や文字盤の変色、腐食、サビ
【目に見えない症状】
ムーブメントの腐食、サビ
フリマサイトやオークションサイトに出品されている時計の、状態の悪そうな見た目の文字盤や針のほとんどは、水分の侵入が原因と思われます。
目に見える症状に留まっていればまだマシですが、より深刻なのは目に見えない症状である「ムーブメントの腐食、サビ」。
ムーブメントが腐食したり錆びたりすることで、時計の機能が低下したり、最悪動かなくなってしまいます。
そこで、時計によって構造は異なりますが一般的に、水が侵入する可能性の高い、風防周り、リューズ、裏蓋などにパッキンが組み込まれ、防水性能を確保しています。
防水性能の分類について
時計の防水性能を把握するには、時計の文字盤、裏蓋、あるいは説明書などにある、「防水性能を表す表記」を確認する必要があります。
この表記から防水性の強さが分かるのですが、注意したいポイントが、防水性能の基準は2種類ある、ということです。
それが、「日常生活用防水」と「潜水用防水」。
簡単に言うと、「ダイビングができるかどうか」で線引きがされています。
これらの基準は、JIS(日本工業規格)及びISO(国際標準化機構)で定められており、その表記の仕方は以下のとおり。
日常生活用防水は、
〜気圧防水(WATER RESISTANT〜BAR)
(3気圧防水は、単に「WATER RESISTANT」と表記されることも)
潜水用防水は、
〜メートル防水(DIVER’S 〜m)
例えば、
10気圧防水
→静止状態にある場合に水深100mまでの水圧に耐えられる。
100m防水
→空気ボンベを使用する潜水で水深100mまでの水圧に耐えられる。
ということで、同じ水深100mでも、「100m防水」の方が「10気圧防水」よりも圧倒的に防水性能が高いことが分かります。
ただし、あらゆる防水時計でJISやISOの厳格な防水基準を満たしているとは限らず、こうした表記ルールが厳密に守られている訳ではないので注意は必要です。
非防水
非防水は、その名の通り防水機能がないことを表します。
日常生活の中で、雨や汗などによる湿気にさえも注意が必要です。現代の時計には非防水のモデルは少ないですが、ヴィンテージ・アンティーク時計では多く見られます。
もちろんヴィンテージ時計にも、防水性能が付いているモデルもありますが、経年によりその機能を果たさない個体が非常に多いため、基本的にヴィンテージ時計は非防水と考えて使う必要があります。
雨の日には着けない、水仕事の際は外すなど、何かと手がかかる時計ですが、その分大切に扱い愛着が湧いてくる、と言う一面もあります。
3気圧防水
ここからは、防水性能の各基準がどの程度の水に耐えられるのか、具体的に見ていきます。
【表記】
WATER RESISTANT 3BAR
WATER RESISTANT
W.R. など
3気圧防水は、静止状態にある場合に水深30mまでの水圧に耐えることができます(あくまで「静止状態」です。水に潜れる訳ではありません…ややこしいですね。)
いわゆる、「日常生活用防水」とだけ書かれるものがコレ。価格帯を問わず様々な時計に用いられます。
最低限の防水性能を持っており、汗をかいたり、小雨や、手洗いや洗顔の際の水しぶき程度であれば問題ありません。
ただし、長時間食器を洗いながら使用したり、シャワーを浴びたり、プールに着けて入るなど、時計をそのまま水につけるのはNGです。
5気圧防水
【表記】
WATER RESISTANT 5BAR
WATER 5BAR RESISTANT
W.R.5BAR など
5気圧防水は、静止状態にある場合に水深50mまでの水圧に耐えることができます。
「日常生活用強化防水」とも呼ばれ、食器洗いや風呂掃除、農業や漁業などの水仕事、スキー・スノーボードやヨット・ボートといったスポーツにも耐え得る防水性能があります。
ただやはり、時計を水にザブザブつけることは難しいので注意が必要です。
また注意したいのが、勢いよく出した蛇口やシャワーにも耐えられません(強い水圧がかかるため)。
10気圧防水・20気圧防水
【表記】
WATER RESISTANT 10(20)BAR
20WATER 10 (20)BAR RESISTANT
W.R. 10 (20)BAR など
10気圧防水は、静止状態にある場合に水深100mまでの水圧に耐えることができます。
20気圧防水は、静止状態にある場合に水深200mまでの水圧に耐えることができます。
これらもまた、「日常生活用強化防水」の範疇ですが、5気圧防水より防水性が高く、水仕事はもちろん、水上スキーや水泳といったマリンスポーツにも対応できます。
さらに、空気ボンベを使用しない潜水=素潜り(スキンダイビング)などでの使用も可能です。
10気圧防水と20気圧防水の使用範囲は似通っていますが、当然20気圧防水の方が防水性が高く、安心感があります。
この辺りの防水性能であれば、ほとんどの場面で水を気にせず時計を着用することができます。
ただ、海水につけた場合は、真水で洗浄しないとパッキンが劣化したり、ケースが錆びたりすることがあるので注意が必要です。
お風呂や温泉での使用も同様ですので、使用後の洗浄はしっかりと行いましょう。
100m〜200m防水(空気潜水用防水)
【表記】
AIR DIVER’S 100 M など
100〜200m防水は、「空気潜水用防水」と呼ばれ、空気ボンベを使用する潜水が可能です。
いわゆる、「ダイバーズウォッチ」の防水性はこの辺りからになります。
表示された水深までの耐圧性と、長時間の水中使用に耐える防水性を備えており、潜水時間や減圧時間を測定するのに必要な回転ベゼルなどの機構を備えているのも特徴です。
浅海での潜水(スキューバダイビングなど)に使用されますが、飽和潜水用に使用することはできません。
ダイバーズウォッチは、ダイバーから絶大な支持を集めるだけでなく、タウンユースにおいても、そのスポーティーなデザインが魅力的で、実用性の高さも相まって非常に人気の高いジャンルです。
200〜1000m防水(飽和潜水用防水)
【表記】
He GAS DIVER’S 200 M など
200〜1000m防水は、「飽和潜水用防水」と呼ばれ、ヘリウムガスボンベを使用する潜水が可能です。
腕時計の防水性能の中で最も高い防水性能がこの、飽和潜水用防水で、深海へのダイビングも可能となります。
圧倒的な防水性能を持つのに加え、逆回転防止ベゼルやヘリウムエスケープバルブ等の、ダイビングで役立つ機能を併せ持つことが多いです。
有名どころでは、ロレックスのシードゥエラー、オメガのシーマスターなどが挙げられます。また国産メーカーも、クオリティの高い飽和潜水時計を販売しています。
ダイビングが趣味でもない限りはオーバースペックですが、この圧倒的な機能性こそがロマン、飽和潜水時計の魅力でもあります。
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